天地無境の迎撃者《インターセプター》外伝 ~プロメテウス~ 第1話 邂逅


投稿者:JVM森島


※出島 創生先生による天地無境の迎撃者《インターセプター》の二次創作となります。左記作品を「カクヨム」、「小説家になろう」でご一読されてからの閲覧をおすすめします。

2030年、金泉里(クムチョンニ):悠久の螺旋を断ち切る者 D

激しい頭痛の果てに降り立った荒野では、鈍色の風が吹いていた。
...ここに全ての元凶がある。
数百メートル先に見える何の変哲もないアパート群は、
その実モエタン製造所として機能しているのだ。
私がシグナルインターセプターに頼らざるを得なかったのは、
その堅牢さのためである。
辺りに点在している集落はすべて要塞となっており、生身の体で潜入するのはあまりにリスクが大きかった。
北朝鮮が核融合炉を作りエネルギー権を掌握するのは目前。
ここで食い止めなくては世の支配構造がもろく崩れ去ったあの2038年を繰り返すことになる。

モエタン製造所では、捕らえられた脱北者や新日本軍兵士たちが縛られ、
「ナースウィッチ小麦ちゃんマジカルて」を観させられることで本人の意思と関係なしにモエタンが生成されていた。
私はこれから、製造所中枢で稼働しているビデオデッキを今手に持っているVHS「学園都市ヴァラノワール」と差し替え、
モエタンの製造をストップさせるつもりだ。
当初はビデオデッキの破壊を考えたが、その行為は彼らの交感神経に影響を及ぼす危険性があった。
あくまでアセンブルの停止に留めるには、このVHSが適任である。作戦のことを思い出しながら、私は歩みを進める。

...インターセプターの作用により、私の体は黄金の霊体<ゴールデンオーラ>を纏っていた。
今の私ならレーダーの網をかいくぐることなど造作もない。
製造所内部に潜入すると、見張りの兵士達は燒酒(ソジュ)を片手に大鍋を囲っていた。
匂いですぐにわかるが、あれは紛れもなくキムチ鍋である。
本場のキムチ鍋を作るために必須な材料は良いアミと、サリ麺(油揚げ麺)だ。
彼らは私に気づくことなく、鍋をつついている。
そのお陰か、仆歩を応用した歩法にて呆気なく中枢までたどり着くことができた。
目の前にある赤いビデオデッキ。
中に入っているビデオを差し替えればやがて起こるであろう災厄を避けることができる。
深呼吸をし、ゆっくりとイジェクトボタンを押下し、ビデオを取り出す。
そして私は手に持っている「学園都市ヴァラノワール」を入れようとした...が入らない。
そう、気づいてしまったのだ。このビデオデッキはベータ規格であったことに。
しかも、取り出したビデオは爪が折られている。これではこの規格に合わせてダビングすることも出来ない。
ここまで来て、全て徒労に終わってしまうのか...。途方に暮れかけたその時、私は外套の外れたボタンをセロハンテープで止めていたことに気づいた。

もしかしたら、変えられるかもしれない。

もしかしたら、断ち切ることができるかもしれない。

そう、私はD。悠久の螺旋を断ち切る者 大輔だ。

2話へ続く...

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